東側がスペイン国境、西側には大西洋が広がるユーラシア大陸最西端の国「ポルトガル」。ポルトガルは、ヨーロッパで最も古くアジアと交流を持った国であり、大西洋に面した…
ポルトガルの世界遺産は17カ所!絶対に見ておきたい有名な世界遺産を厳選して紹介
ポルトガルには17カ所もの世界遺産があり、その数の多さは国土の小ささを考えると驚くべきものです。これらの世界遺産は、古代ローマ時代から大航海時代まで、ポルトガルの豊かな歴史と文化を反映しています。リスボンやポルトなどの主要都市にある有名な建造物から、ドウロ川流域のワイン生産地域、さらには先史時代の岩絵まで、多様な遺産が存在します。本記事では、ポルトガルを訪れる際に絶対に見ておきたい代表的な世界遺産をいくつか厳選してご紹介します。これらの遺産を巡ることで、ポルトガルの魅力をより深く体験することができるでしょう。
2024年09月03日更新
ポルトガルの世界遺産は全部で17カ所登録されている!
ポルトガルには、国土面積が日本の約4分の1にもかかわらず、17カ所もの世界遺産が登録されています。これらの遺産は16の文化遺産と1つの自然遺産から構成されており、大航海時代の繁栄を物語る建造物から、美しい自然景観まで多岐にわたります。例えば、リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔、シントラの文化的景観、ポルト歴史地区などが有名です。これらの世界遺産は、ポルトガルの豊かな歴史と文化を反映しており、国内外の観光客を魅了し続けています。ポルトガルの世界遺産の多くは公共交通機関でアクセス可能であり、旅行者にとって比較的訪れやすいのも特徴です。ポルトガルの世界遺産一覧表
世界遺産登録名 | 登録年 | 種別 |
---|---|---|
リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔 | 1983年 | 文化遺産 |
オポルトの歴史地区 | 1996年 | 文化遺産 |
トマールのキリスト騎士団の修道院 | 1983年 | 文化遺産 |
バターリャ修道院 | 1983年 | 文化遺産 |
アルコバッサ修道院 | 1989年 | 文化遺産 |
シントラの文化的景観 | 1995年 | 文化遺産 |
エヴォラの歴史地区 | 1986年 | 文化遺産 |
アゾレス諸島の火山島の自然公園 | 1983年 | 自然遺産 |
マデイラ島のラウリシルバ | 1999年 | 自然遺産 |
アルト・ドウロ・ワイン生産地域 | 2001年 | 文化遺産 |
コインブラ大学-アルタとソフィア | 2013年 | 文化遺産 |
ギマランイスの歴史地区 | 2001年 | 文化遺産 |
トーレス・ヴェドラスのリネア・テレスティーナ | 2006年 | 文化遺産 |
ピコ島のブドウ畑の景観 | 2004年 | 文化遺産 |
エルヴァスの要塞町とその防衛施設 | 2012年 | 文化遺産 |
ボルジェス城とシントラ宮殿 | 1999年 | 文化遺産 |
アゾレス諸島のサン・ジョルジュ島 | 1983年 | 自然遺産 |
ポルトガルでおすすめの世界遺産11選
大航海時代の栄華を今に伝える「リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔」
リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔は、ポルトガルの大航海時代の栄華を象徴する世界遺産です。16世紀初頭、マヌエル1世の命により建設されたこれらの建造物は、ポルトガルの海洋帝国としての力と富を表現しています。ジェロニモス修道院は、エンリケ航海王子とヴァスコ・ダ・ガマの功績を称えるために建てられ、その豪華絢爛な姿はマヌエル様式の最高傑作とされています。一方、テージョ川河口に立つベレンの塔は、元々港を守る要塞として機能しながら、その優美な姿から「テージョ川の貴婦人」と呼ばれています。これらの建造物は、ポルトガルが海外交易で得た富を惜しみなく注ぎ込んだ結果であり、大航海時代のポルトガルの繁栄を今に伝える貴重な文化遺産となっています。中世ヨーロッパ最大級のゴシック建築「アルコバッサ修道院」
アルコバッサ修道院は、ポルトガル最古のゴシック建築として知られる壮大な修道院です。12世紀に建立され、その後改築を重ねて現在の姿となりました。修道院の正面ファサードは18世紀にバロック様式で改築されましたが、内部は当初のゴシック様式が保たれており、強い精神性を感じさせます。特筆すべきは、身廊部分の規模で、幅23m、高さ20m、奥行き106mという初期ゴシック様式としてはポルトガル最大の規模を誇ります。その壮大な規模、建築様式の美しさ、そして緻密で完成度の高い仕上がりから、シトー会のゴシック建築の傑作と評されています。ポルトガル・ゴシック建築の最高傑作「バターリャ修道院」
バターリャ修道院は、ポルトガル・ゴシック建築の最高傑作として知られる壮大な修道院です。1386年に建設が始まり、約2世紀にわたって15人もの建築家によって完成されました。修道院の名前は「勝利の聖母マリア修道院」を意味し、1385年のアルジュバロータの戦いでのポルトガルの勝利を記念して建てられました。建築様式はゴシック様式を基調としながら、後期にはマヌエル様式も取り入れられ、独特の調和を生み出しています。特に「王の回廊」や「未完の礼拝堂」は、この融合を象徴する建造物として有名です。バターリャ修道院は、その建築技術と芸術性の高さから1983年にユネスコ世界遺産に登録され、ポルトガルの独立と文化的アイデンティティを象徴する重要な遺産となっています。テンプル騎士団の要塞「トマールのキリスト教修道院」
トマールのキリスト教修道院は、12世紀にテンプル騎士団によって建設された要塞で、ポルトガルの歴史と建築の傑作として知られています。1160年に建造されたこの要塞は、聖地パレスチナの十字軍の要塞を模して設計され、当時のポルトガルで最も先進的な軍事施設でした。修道院の中心にある円形教会「シャロラ」は、エルサレムの聖墳墓を模して建てられ、ヨーロッパ最大かつ最も保存状態の良い円形教会として知られています。1312年にテンプル騎士団が解散された後、ポルトガルではキリスト騎士団として引き継がれ、大航海時代まで十字軍の精神を保ち続けました。修道院内には、ロマネスク、ゴシック、マニエリスムなど様々な建築様式が見られ、ポルトガルの歴史と文化の変遷を物語っています。ワインと坂の街の歴史地区「ポルト歴史地区」
ポルト歴史地区は、ポルトガル北部に位置する港湾都市ポルトの中心部に広がる世界遺産です。1996年に登録され、2016年には「ポルト歴史地区、ルイス1世橋およびセラ・ド・ピラール修道院」として名称が変更されました。この地区は、ドウロ川河口の丘陵地帯に築かれた美しい街並みで知られています。ポルトは、ローマ時代から重要な交易拠点として栄え、14世紀から15世紀の大航海時代には、エンリケ航海王子の海外進出の拠点となりました。18世紀以降は、ポートワインの輸出で更なる繁栄を遂げ、その富は豪華な建造物の建設に注がれました。
歴史地区内には、サン・ベント駅、クレリゴス教会、ポルト大聖堂など、多くの歴史的建造物が点在しています。特に、サン・ベント駅の内壁を飾る2万枚のアズレージョ(青い装飾タイル)は、ポルトガルの歴史を描いた壮大な壁画として有名です。これらの建造物は、ポルトの長い歴史と文化的な重要性を物語っており、訪れる人々を魅了し続けています。
大西洋に浮かぶ要塞都市「アソーレス諸島のアングラ・ド・エロイズモ」
アングラ・ド・エロイズモは、ポルトガル本土から約1,400km西の大西洋に浮かぶアゾレス諸島のテルセイラ島に位置する歴史的な港町です。15世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパと新大陸、アフリカを結ぶ重要な中継地として繁栄しました。町の中心部には、16世紀末に建造されたサン・セバスチアン要塞や、16世紀建造のレデントール・デ・セ大聖堂など、当時の繁栄を物語る歴史的建造物が残されています。これらの建造物は、大航海時代の海洋交易の重要性を示す貴重な例証として評価され、1983年にユネスコ世界遺産に登録されました。1980年の大地震で被害を受けましたが、その後修復が進められ、現在も大航海時代の面影を色濃く残す貴重な歴史都市として、多くの観光客を魅了しています。古代ローマの面影を残す「エヴォラ歴史地区」
エヴォラ歴史地区は、ポルトガル南東部アレンテージョ地方に位置する古代ローマ時代からの歴史を持つ街で、1986年にユネスコ世界遺産に登録されました。約6kmの城壁に囲まれた旧市街には、2000年以上の歴史が凝縮されています。ローマ時代の遺構であるディアナ神殿、12世紀から13世紀にかけて建造されたロマネスク様式とゴシック様式が融合したエヴォラ大聖堂、そして約5000体の人骨で装飾されたサン・フランシスコ教会の人骨堂など、様々な時代の建築物が共存しています。街の中心にあるジラルド広場から大聖堂へと延びるメインストリート「10月5日通り」には、白い家並みが続き、中世の雰囲気を今に伝えています。エヴォラは「博物館都市」とも呼ばれ、古代から中世、ルネサンス期までの歴史的建造物が良好な状態で保存されており、訪れる人々を魅了し続けています。ロマン主義建築の宝庫「シントラの文化的景観」
シントラの文化的景観は、ポルトガルのリスボン近郊に位置し、19世紀のロマン主義建築の中心地として知られています。この地域には、様々な建築様式が融合した独特の景観が広がり、1995年にユネスコ世界遺産に登録されました。特に注目すべきは、ペーナ国立宮殿(パラシオ・ダ・ペーナ)で、ゴシック、ルネサンス、イスラム風など多様な様式を取り入れた19世紀ロマン主義建築の傑作とされています。宮殿は鮮やかな色彩と装飾的な要素が特徴で、周囲の自然景観と調和しながら、まるでファンタジーの世界に迷い込んだかのような印象を与えます。シントラの文化的景観には、ペーナ宮殿以外にも、ムーア人の城壁、シントラ宮殿、レガレイラ宮殿など、様々な時代の建造物が共存し、ポルトガルの豊かな歴史と文化を反映しています。2万年前の芸術に出会える「コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代の岩絵遺跡群」
コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代の岩絵遺跡群は、ポルトガルとスペインの国境地帯に位置する貴重な先史時代の芸術遺産です。この遺跡群は、紀元前22000年から紀元前8000年頃にかけて制作された数千点もの岩絵を含んでおり、1998年にポルトガル側のコア渓谷が世界遺産に登録され、2010年にスペイン側のシエガ・ヴェルデが追加されました。特筆すべきは、これらの岩絵が洞窟内ではなく、屋外の岩肌に刻まれている点で、先史時代の芸術が日光の下で鑑賞できる稀有な例となっています。岩絵には馬、牛、その他の動物や人物、抽象的な図像が描かれており、当時の人々の生活や信仰を垣間見ることができます。この遺跡群は、旧石器時代の野外岩絵としては最大級のものであり、先史時代のイベリア半島における人々の生活と芸術表現を理解する上で極めて重要な遺産となっています。火山の大地に広がる「ピコ島のブドウ畑文化の景観」
ピコ島のブドウ畑文化の景観は、ポルトガル領アゾレス諸島のピコ島西部に広がる独特のワイン生産地域です。15世紀からの伝統的なブドウ栽培方法が今も受け継がれており、2004年にユネスコ世界遺産に登録されました。この景観の最大の特徴は、火山岩を積み上げて作られた「クラウ」と呼ばれる石垣で、ブドウ畑を6×3メートルほどの区画に分け、強い海風からブドウを守っています。これらの石垣の総延長は驚くべきことに8000キロメートルにも及びます。ブドウは溶岩の割れ目に植えられ、地面に這わせるように栽培されており、この独特の方法によって生み出されるピコワインは、ミネラル分豊富な味わいで知られています。バロック様式の巡礼地「ブラガのボン・ジェズス・ド・モンテ聖域」
ブラガのボン・ジェズス・ド・モンテ聖域は、ポルトガル北部のエスピーニョ山に位置する巡礼地で、2019年にユネスコ世界遺産に登録されました。16世紀以降にカトリック教会によって築かれたこの聖域は、バロック様式の美しさを象徴する建築物として知られています。聖域の中心であるボン・ジェズス教会へと続く西斜面には、1784年から1811年にかけて整備された「十字架の道」があり、キリストの受難をモチーフにした彫像を収めた礼拝堂が並んでいます。特に印象的なのは、573段の荘厳なバロック様式の階段で、彫像や噴水で飾られており、教会へと続いています。この複合施設は、バロック様式、ロココ様式、新古典主義が融合した建築と景観の組み合わせとなっており、ポルトガルの宗教建築の傑作として評価されています。ポルトガルで世界遺産を観光する際の注意点
ポルトガルの世界遺産を観光する際は、以下の点に注意が必要です。まず、貴重品の管理に気をつけましょう。特に観光客が多く集まるリスボンやポルトの人気スポットでは、スリや置き引きに注意が必要です。カバンは必ずファスナー付きのものを使い、体の前で持つようにしましょう。また、パスポートは常に携帯することが義務付けられているため、盗難に遭わないよう肌身離さず所持しましょう。教会や修道院などの宗教施設を訪れる際は、敬意を払い、大声での会話や写真撮影は控えめにしましょう。特にミサの時間帯は、信者の邪魔にならないよう静かに見学することが求められます。また、公共交通機関を利用する際は、混雑した車両や場所での盗難に注意し、貴重品は常に身近に置くようにしましょう。これらの注意点を守ることで、ポルトガルの豊かな世界遺産をより安全に楽しむことができます。